広告やキャンペーンが炎上して中止になるケースが後を絶ちません。

 2016年5月11日、旅行会社のHISが「HIS×東大美女図鑑」というキャンペーンを行って、インターネットで苦情が殺到し、キャンペーンを中止したというニュースがありました。

 このキャンペーンは、抽選で当選した人に対して、”東大美女”が隣に座ってフライトのお伴をするという企画のようで、学生をまるでホステスのように扱っているとしか思えない性差別的な内容でした(もちろん実際のホステスであればこのような扱いをしても良いという話ではない)。

 キャンペーンの文言も完全に「アウト」。たとえば、告知文の冒頭に「お隣いいですか?」というキャッチフリーズが踊っていますが、漫画の中にしか無いような身勝手な男性の妄想を、女子大生に言わせているところが問題だと言えるでしょう。

 企画者や決裁権者が男性か女性かは分かりませんが、「男性からお金を得るために女性の性的な面を接待の道具に使う」という古臭い性差別の構図を、2016年にもなってもなお問題だと気が付けない大企業が存在することが信じられません。どうしてこのような企画が社内で通ってしまうのでしょうか?

 これまで広告や企画が性差別的だとして批判にあったケースは多々ありました。例をあげれば、駿台予備校、ルミネ、明星食品など、枚挙に暇がありません。最近では中止にこそなりませんでしたが、HKT48の歌詞や、世田谷の「声かけ写真展」のような事例も性差別的だとして大きな批判を呼びました。

 中止に追い込まれれば当然企画をするためにかけたリソースが全て無駄になり、多大な損失が生じます。ですから、性差別が何かを理解してそれに抵触しない広告や企画を行うのは、もはや重要なビジネススキルの一つであり、管理職や経営者がそれに欠けているのであれば、「能力が低い」「仕事ができない」と言えるのではないでしょうか?

 性差別が理解できていないことは「人として問題」ですが、それと同時に「ビジネスパーソンとしても問題」なのです。



◆謝罪しているようで全く謝罪になっていない人たち

 さらに、問題を大きくしたのはその謝罪の仕方です。HISは即日「皆様にご不快な思いを感じさせる内容でありましたことを深くお詫びし、取りやめることに致します」という謝罪文を出したのですが、結局それが火に油を注ぐ結果になりました。

 というのも、「不快な思いをさせて申し訳ございません」というのは、謝罪をしているようで謝罪ではありません。「謝罪」とは「罪を謝る」と書きます。今回はあくまで性差別という行為をしたこと自体が罪なのですから、それに関して謝るべきです。ところが、不快にさせたという二次的な現象についてしか謝っていないわけですから、これは「罪を謝った」とは言えないわけです。

 つまり、やっていることは「謝罪」ではなく、あくまで「謝不快」に過ぎません。英語ではこれを「Non-apology apology」と言います。これでは「何も反省していない!」と受け止められても当然でしょう。むしろ自分たちは非を認めておりませんと自らアピールしているようなものです。

 このような誤った謝罪文で火に油を注いでしまった企業や政治家等をこれまでも幾度も見てきましたが、いまだにそれを理解できない企業が後を絶たないのが本当に残念に思います。でもなぜ彼らは理解ができないのでしょうか?

 朝日新聞社WEBRONZAに寄稿した「芸人の制服窃盗事件に見る被害者の軽視」や「軽井沢バス事故の原因は日本的発想の欠点にある」でも指摘していますが、日本社会は「法治より人治」という傾向が強いことが原因であると言えるでしょう。

 実際に、学校や親も「悪いことをしてはいけない」「なぜ、これが悪いことか分かるか?」という教育よりも、「周りに迷惑をかけてはいけない」という教え方をすることが多いわけですから、結局のところ何が悪いことかを考えずに大人になってしまった人が多いわけです。

 それゆえ、性差別に対してそれ自体が問題だという意識が無い社員ばかり集まっている場合や、問題だと思っている人が社内にいても発言権が弱く、同調圧力で声が殺されてしまっている場合に、性差別的な広告や企画にストップがかからず公に出てきてしまうのだと考えられます。



◆性差別の理解無くして企業の発展無し

 グローバル化が進み、日本の性差別的な問題が次第に可視化されて行く中で、今後ますます企業は性差別の問題に対して敏感にならなくてはなりません。これからはそのようなリスクマネジメントをしっかりと行う企業がブランドイメージを確立させて行くはずです。採用にも大きな影響を及ぼすことでしょう。

 繰り返しになりますが、性差別が何かを理解してそれに抵触しない広告やキャンペーンを行うのは、重要なビジネススキルの一つです。そのリスクマネジメントができないならば、ビジネスパーソンとして失格と言えます。

 もし社内にリソースが無いならば、積極的に社外のサービスを利用すれば良いと思います。私や私の会社でも、ご連絡頂ければ、「性差別とは何か」ということを徹底的にお伝えさせて頂くつもりです。

 今回は性差別の問題について、人権という観点からに加えて、ビジネスの観点から見てきました。性差別という人権侵害を生み出さず、企業側も不利益を被らない。そのようなウインウインの関係を目指して、企業は性差別への理解を広めていって頂きたいですし、私もそういう社会を実現するために、少しでも貢献して行きたいと思っています。

hisapology


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